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賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制の改正)の税制優遇の利用【中小企業・個人事業主版】

投稿日:2018年9月26日 更新日:

 

賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制)は、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

従前から、所得拡大促進税制は存在していましたが、平成30年4月1日以降に開始される事業年度(個人事業主の方の場合には平成31年分)から制度が大きく改正されています。要件を確認して、この税制優遇を有効的に活用していきましょう。

 

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中小企業者等向け「賃上げ・投資促進税制(所得課題促進税制)」の概要

 

中小企業者の定義

今回こちらで説明する税制の対象は、中小企業向けとなります。(大法人向けについては、こちらになります。)

大企業版
【大企業版】賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制の改正)の税制優遇の利用

  所得拡大促進税制が改正され、平成30年4月1日以降に開始する事業年度から賃上げ・投資促進税制(H30年度版 所得拡大促進税制)に変わりました。改正後においても、青色申告法人が、一定の要件 ...

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中小企業の該当要件: 資本金又は出資金が 1 億円以下で、発行済株式や出資の一定割合(1つの法人により 50%又は複数の法人の合計で3分の2)以上が大規模法人に所有されていない法人。または、資本若しくは出資を有しない法人又は個人で、常時使用する従業員の数が1,000 人以下のもの。

 

通常制度の概要

次の要件のすべてを満たす場合、給与総額(役員報酬等は除く。)の前年度からの増加額の15%を税額控除(法人税額の20%が上限)することができます。

 

通常の要件

①給与総額(役員報酬等は除く。)が前年度より増加

②継続雇用者給与等支給額(※1)が前年度比で1.5%以上増加

 

(※1) 継続雇用者給与等支給額・・・「継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員のうち、一定の者)に支払った給与等の総額。」

→詳しくは、以下で解説していきます。

 

上乗せ措置の概要

次の要件のすべてを満たす場合、給与総額(役員報酬等は除く。)の前年度からの増加額の10%が税額控除額に上乗せされます。つまり通常制度の15%の税額控除と合わせて25%を税額控除することができます。(法人税額の20%が上限)

 

上乗せの要件

①給与総額(役員報酬等は除く。)が前年度より増加

②継続雇用者給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加

③「教育訓練費が前年度比で10%以上増加していること」又は「中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実に行われていること」

 

→詳しくは以下で解説していきます。

 

対象となる事業年度

法人の場合には、平成30年4月1日~平成33年3月31日までに開始される事業年度が対象となります。個人事業主の方の場合には平成31年分から対象となります。

以下、適用を受けようとする事業年度(個人の場合には年)のことを適用年度といいます。以下で頻繁に出てきますので覚えておいてください。

 

中小企業者等向け「賃上げ・投資促進税制(所得課題促進税制)」の通常制度の詳細

 

税額控除額

適用の要件(1.2通常制度の概要の中で記載した要件)を満たした場合、国内雇用者に支払った給与等の総額のうち、適用年度において前事業年度から増加した金額の15%を税額控除することができます。ただし、法人税額の20%が控除額の上限となります。

 

〇留意点

給与等の総額には、パート、アルバイト、日雇い労働者に支給する給与も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者に支給する給与は含むことができません。

 

適用の要件~継続雇用者給与等支給額とは?~

適用のための要件をもう一度みてみましょう。

 

通常の要件

①給与総額(役員報酬等は除く。)が前年度より増加

②継続雇用者給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加

 

②の「継続雇用者給与等支給額」とは「継続雇用者」に支払った給与等の総額をいいます。

「継続雇用者」とは、以下のすべてを満たす者のことを指します。

 

継続雇用者

① 前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等の支給を受けた国内雇用者である

② 前事業年度及び適用年度の全ての期間において雇用保険の一般被保険者である

③ 前事業年度及び適用年度の全てまたは一部の期間において高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていない

 

つまり、雇用保険の一般被保険者となっている従業員で、前期首から当期末まで毎月給与を支給されている人(高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象者は除く。)のことを指します。

継続雇用者に該当しない人は、例えば次のような人です。

 

• 前事業年度または適用年度の途中で採用された者、退職した者
• 前事業年度または適用年度の全てまたは一部の期間において産休・育休等により休職しており、その間給与等の支給がない月があった者(「産休・育休手当」等は給与等に含まれると解されるため、注意が必要です。)。
• 前事業年度または適用年度の全てまたは一部の期間においてパート・アルバイト・時短勤務等により、雇用保険の一般被保険者でなかった者。
• 前事業年度の開始以降適用年度の終了までの間に高年齢者雇用安定法に定める継続雇用制度の対象となった者。

 

継続雇用者給与等支給額の分かりやすい算出イメージがありましたので、ご参考までに転載致します。

 

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中小企業者等向け「賃上げ・投資促進税制(所得課題促進税制)」の上乗せ制度の詳細

 

税額控除額

適用の要件(1.3上乗せ措置の概要の中で記載した要件)を満たした場合、国内雇用者に支払った給与等の総額のうち、適用年度において前事業年度から増加した金額の10%を通常制度の税額控除額に上乗せすることができます。つまり、前事業年度から増加した金額の25%を税額控除することができます。ただし、法人税額の20%が控除額の上限となります。

 

〇留意点

給与等の総額には、パート、アルバイト、日雇い労働者に支給する給与も含みますが、使用人兼務役員を含む役員及び役員の特殊関係者、個人事業主と特殊の関係のある者に支給する給与は含むことができません。

 

適用の要件~教育訓練費と経営力向上計画~

適用のための要件をもう一度みてみましょう。

 

上乗せの要件

①給与総額(役員報酬等は除く。)が前年度より増加

②継続雇用者給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加

③「教育訓練費が前年度比で10%以上増加していること」又は「中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実に行われていること」

 

①と②については、通常の制度の場合と同様ですが、上乗せ措置の場合には、継続雇用者給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加していることが必要となります。

③の「教育訓練費」と「経営力向上計画」について、次で詳しくみていきます。

 

教育訓練費増加要件

上乗せ措置の適用を受けるための要件の一つに、「適用年度における教育訓練費の額が前事業年度における教育訓練費の額と比べて10%以上増加していること」があります。(これを満たせない場合には下記の経営力向上要件を満たす必要があります。)

この教育訓練費について、以下で詳しくみていきます。

 

教育訓練の対象者

法人又は個人のその事業に係る国内雇用者を対象としているものです。ただし、以下の者は対象外となります。

〇法人の役員又は個人事業主
〇使用人兼務役員
〇当該法人の役員又は個人事業主と特殊関係のある者(①役員の親族、②事実上婚姻関係と同様の事情にある者、③役員から生計の支援を受けている者、④ ②又は③と生計を一にする親族)
〇内定者等の入社予定者(国内雇用者ではないため対象外となります。)

 

対象となる教育訓練費の範囲 

以下3つのパターンが あります。

 

(1)法人等が教育訓練等を自ら行う場合の費用(外部講師謝金等、外部施設使用料等)

① 法人等が国内雇用者に対して、外部から講師又は指導員(以下「外部講師等」)を招聘し、講義・指導等の教育訓練等を自ら行う費用であること。

② 外部講師等に対して支払う報酬、料金、謝金その他これらに類する費用であること。
③ 法人等がその国内雇用者に対して、施設、設備その他資産(以下「施設等」)を賃借又は使用して、教育訓練等を自ら行う費用であること。
④ 施設・備品・コンテンツ等の賃借又は使用に要する費用であること。取得した場合の費用は対象にはなりません。
⑤ 教育訓練等に関する計画又は内容の作成について、外部の専門知識を有する者に委託する費用であること。

 

(2)他の者に委託して教育訓練等を行わせる場合の費用(研修委託費)

① 法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者に委託して教育訓練等を行わせる費用であること。
② 教育訓練等のために他の者に対して支払う費用(講師の人件費、施設使用料等の委託費用)であること。

 

(3)他の者が行う教育訓練等に参加させる場合の費用(外部研修参加費)

① 法人等がその国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のため、他の者が行う教育訓練等に当該国内雇用者を参加させる費用であること。
② 他の者が行う教育訓練等に対する対価として当該他の者に支払う授業料、受講料、受験手数料その他の費用であること。

 

対象とならない費用

例えば以下のようなものは教育訓練費の対象とはなりません。

(1) 法人等がその使用人又は役員に支払う教育訓練中の人件費、報奨金等
(2) 教育訓練等に関連する旅費、交通費、食費、宿泊費、居住費(研修の参加に必要な交通費やホテル代、海外留学時の居住費等)
(3) 福利厚生目的など教育訓練以外を目的として実施する場合の費用
(4) 法人等が所有する施設等の使用に要する費用(光熱費、維持管理費等)
(5) 法人等の施設等の取得等に要する費用(当該施設等の減価償却費も対象となりません)
(6) 教材等の購入・製作に要する費用(教材となるソフトウエアやコンテンツの開発費を含む)
(7) 教育訓練の直接費用でない大学等への寄附金、保険料等

 

教育訓練費の明細書の記載事項

教育訓練費要件にて上乗せ措置の適用を受ける場合には、確定申告書に教育訓練費の明細を添付する必要があります。

明細様式は自由ですが、以下の項目を含んでいる必要があり、適用年度と前事業年度の2期分の明細を添付する必要があります。

(1) 教育訓練等の実施時期:「年月」は必須、「日」は任意で記載
(2) 教育訓練等の実施内容:教育訓練等のテーマや内容及び、実施期間
(3) 教育訓練等の受講者 :教育訓練等を受ける予定、または受けた者の氏名等
(4) 教育訓練費の支払証明:費用を支払った年月日、内容及び金額並びに相手先の氏名又は名称が明記された領収書等

 

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【出典】中小企業庁 ご利用ガイドブック

経営力向上要件

上乗せ措置の適用を受けるための要件の一つに、「適用年度終了の日までに中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上計画に基づき経営力向上が確実に行われたこと」があります。(これを満たせない場合には上記の教育訓練費増加要件を満たす必要があります。)

この経営力向上計画についてみていきます。

 

経営力向上計画とは

経営力向上計画とは、中小企業等経営強化法に基づき、事業者が、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。
認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。

経営力向上計画の認定については、こちらの記事を参考にしてください。

【H29年度税制改正】中小企業経営強化税制が創設されています

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〇上乗せ措置が受けられる指標

上乗せ措置の適用を受けるためには、経営力向上計画に記載された「経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」は以下に示すものである必要があります。

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【出典】中小企業庁 ご利用ガイドブック

経営力向上報告書の作成・提出

上乗せ措置を利用する場合は、適用年度終了後、税務申告までの間に、「経営力向上が行われたことに関する報告書(経営力向上報告書)」を作成し、提出する必要があります。
なお、報告については、原則として経営力向上計画の認定省庁に関わらず、同一のWEBフォームによる報告システムにより行われることが予定されており、関係省庁において準備が進められています。

また、経営力向上計画に記載された「経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」(上記に記載した指標に限られます。)についての、現状値(認定を受けた経営力向上計画に記載されたもの)と「経営力向上報告書」に記載された適用年度における実績値を比較して、適用年度の方が増加している場合でないと本要件による上乗せ措置は利用できません。

減少していることが望まれる「離職率」、「運転者の平均労働時間」、「ICTの活用等によるコストの削減」は減少していることが必要となります。

 

税務申告書への必要書類の添付が必要

最後に税務申告書に必要書類を添付して申告することで、税制上のメリットを享受することができます。必要書類は次のものです。

①認定を受けた経営力向上計画(変更の認定を受けている場合は変更後のもの)の写し(コピー)

②経営力向上計画の認定書の写し(コピー)

③経営力向上報告書(出力されたもの)

 

計画の実施時期と上乗せ措置適用の時期に留意

経営力向上要件による上乗せ措置は、適用年度終了の日までに経営力向上計画の認定を受けており、当該計画が適用年度終了の日までに始まるものでなければなりません。
適用年度の全期間が経営力向上計画に記載された「実施時期」に含まれている必要はありませんが、少なくとも「実施時期」の始期が適用年度の終了月以前になっている必要があります(経営力向上計画において、「実施時期」は月単位で記載します。)。

 

新設法人又は新個人事業主の場合に適用を受けられるか?

H30年4月1日以降開始の事業年度(個人の場合はH31年分)については、適用できません。新設法人等は前事業年度がないことから、継続雇用者自体が存在しないため、適用要件を満たすことができません。(法律上手当てがされていません。)2年目以降についても、継続雇用者が0人の場合には適用できません。

 

まとめ

賃上げ・投資促進税制については、他の税制と比べても税のメリットが大きいといえます。計算方法等については、改正により、改正前の所得拡大促進税制に比べて計算方法が簡便化されたものの、それでもまだ複雑と言わざるをえない部分もあります。

まずは、以下に記載したフローチャートで適用の可否を大まかに把握して、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

 

 

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中小企業庁 資料を基に作成

 

 

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  • この記事を書いた人

jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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