通信の高速化と大容量化が進んだことで、インターネット環境が飛躍的に進化し、スマートフォンの普及によって動画は今や当たり前のメディアツールとなっています。
動画は、物事の説明やPRの効果が高いため、企業や個人にとっても広く使われています。今回は動画の制作費用の税務上の取扱いについて見ていきます。

質問【動画の制作費用の税務上の取扱い】
【質問】動画の制作費用はどのように処理したらよいか?
当社では、新商品を製作するたびに新商品の発表会を行っております。
発表会では新商品を効果的にアピールするために、商品PR動画を製作し、上映をしております。このような動画を制作するにあたって生じた費用はどのように処理したらよいでしょうか?
ご質問への回答
商品をPRすることを目的とした動画の制作費用は、広告宣伝費として処理されることになると考えられます。
ただし、使用目的や使用期間、制作会社との契約内容等によっては、資産計上の検討が必要となる場合もあります。
解説
動画の制作費用は無形固定資産のソフトウェアに該当するか
ソフトウェアの税法上の定義については法人税法上特段規定されていませんが、租税特別措置法や会計基準を参考にすると、以下であると考えられています。
メモ
・コンピューターに一定の仕事を行わせるためのプログラム等
一般的な動画であれば、プログラミングも施されていないため、「ソフトウェア」には該当せず、無形固定資産として計上し、均等償却することも不要であると考えられます。
動画の制作費用は繰延資産に該当するか
税法上の繰延資産については、政令で限定列挙又は通達で示されており、動画の制作費用は、そのいずれにも該当しないと考えられます。
動画の制作費用は有形固定資産に該当するか
耐用年数を定めている「耐用年数省令」には、器具備品に「映画フィルム・磁気テープ・レコード(耐用年数2年)」というものがあります。
また、国税庁は、テレビ放映用のコマーシャルフィルムについて、通常は減価償却資産として資産計上し、法定耐用年数2年で減価償却するものとしています。一方で、テレビ放映期間が1年未満のものについては、「使用可能期間が1年未満のもの」として、事業の用に供した事業年度において損金算入することができます。
したがって、動画の制作費用については、単に「広告宣伝のための動画」であることだけで判断するのではなく、その媒体や使用目的、使用期間等を確認する必要があります。
動画の制作費用は広告宣伝費として処理を行う
以上を踏まえると、今回のように新商品をPRすることを目的として制作し、発表会等で使用する一般的なPR動画の制作費用については、広告宣伝費として一括損金又は一括で必要経費算入となることが一般的と考えられます。
厳密には異なるものの、考え方の参考となるのが、社歌やコマーシャルソング等の制作費用の取扱いを定めた(法人税法基本通達7-1-10)があります。
法人税法基本通達 7-1-10 (社歌、コマーシャルソング等)
社歌、コマーシャルソング等の制作のために要した費用の額は、その支出をした日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。
法人税法基本通達の逐条解説によると、社歌、コマーシャルソング等は、その性質上、費用効果の及ぶ期間の測定が極めて困難である上、場合によってはごく短期間のうちに費用効果が失われるものも数多いのではないかと考えられるとした上で、税務執行上、従来から個別的に支出時に損金として認めていたという実態を踏まえて、これらの費用を支出時点で損金算入することができるとされています。
商品PR動画についても、商品の広告宣伝を目的としたものであり、広告効果の及ぶ期間を明確に測定することが困難なものについては、同様の考え方が参考になるものと考えられます。
ただし、広告宣伝費として処理する場合でも、契約等により広告宣伝を行う期間が明確に定められているものについては、その期間に応じた費用処理が必要となる場合があります。
参考となるものとして、国税庁の文書回答事例(いくつかあります。)においては、イベントへの広告協賛費用について、広告宣伝が開始された日からイベントの閉会日までの期間を基礎として期間配分し、損金の額又は必要経費に算入する取扱いが示されています。
この文書回答事例は動画の制作費用を直接取り扱ったものではありませんが、広告宣伝の効果が及ぶ期間が契約等により明確となっている場合の費用処理を考える上では、参考になるものと考えられます。
したがって、動画についても、使用期間が明確に定められている場合のほか、制作に伴って著作権等の権利を取得する場合などには、契約内容や使用実態等に応じて個別に検討する必要があります。
※本記事は、一般的な税務上の取扱いについて解説したものであり、個別の事案に対する税務上の判断や処理を保証するものではありません。実際の取扱いは、取引内容や事実関係、適用される法令・通達等により異なる場合がありますので、具体的な判断に当たっては、税理士または所轄の税務署等にご確認ください。なお、本記事の内容は公開日時点の法令・制度等に基づいています。