税金(法人)

【平成29年度税制改正】吸収合併及び株式交換における対価要件の見直し

平成29年度税制改正により、平成29年10月1日以後に行われる吸収合併及び株式交換の適格要件について、合併法人又は株式交換完全親法人の被合併法人又は株式交換完全子法人に対する持株割合が3 分の2以上の場合には、金銭その他の資産の交付がある場合にも適格合併又は適格株式交換の要件のうち、対価要件を満たすこととされました。

今回はこの改正により変更が生じた合併の税務処理について、みていきたいと思います。
(今回の内容はかなり専門的な話になります点ご了承ください。)

 

適格要件の対価要件が改正された趣旨

改正前の取扱いとしては、組織再編成に際し現金等が交付された場合には、適格要件を満たせず、非適格組織再編成となる取扱でした。

適格とするためには、金銭以外の資産の交付(対価要件)が必要になります。

この対価要件について、組織再編成前に特定の株主が対象会社を支配している場合において、その特定の株主に対象会社が吸収される合併等が行われるときは、組織再編成により少数株主に株式以外の対価が交付されたとしても、その特定の株主が株式の所有を通じて対象会社の資産を支配している状態に変わりがないといえます。

このような場合には、移転資産に対する譲渡損益(保有資産に対する評価損益)を計上する必要はないと考えられることから、支配関係がある法人間の吸収合併及び株式交換の対価要件が緩和されることになりました。

 

 

吸収合併

適格合併となる要件のうち合併の対価の範囲に、合併の直前において合併法人が被合併法人の発行済株式等の総数又は総額の3分の2以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合における合併法人以外の株主等に交付される金銭その他の資産が追加されました(法法2 十二の八)。

 

 

被合併法人の株主における課税関係

上記のような金銭等が交付された場合における適格合併について、被合併法人の株主の課税関係はどうなるのでしょうか。

合併において被合併法人の株主における旧株(被合併法人株式)の譲渡損益を計上しないための要件(金銭等が交付されないこと)については改正がされていません(法法61の2 ②、法令119①五)。

したがって、被合併法人の株主においては、旧株の譲渡損益が計上されます(法法61の2 ①)。

また、適格合併に係る被合併法人の株主については、金銭その他の資産の交付を受けた場合にもみなし配当課税を行わないこととされています(法法24①一)。

(適格合併については、平成22年度税制改正により、合併対価は税制上も私法上と同様に直接被合併法人の株主等に交付されたこととして取り扱うこととされ、今回もこの取扱いに変更はないことによっています。)

 

【参考仕訳】

適格合併~金銭等の交付なし~(従来どおり)

合併法人株式 ××× 被合併法人株式 ×××(帳簿価額)

 

適格合併~金銭等の交付あり~(改正事項)

現金預金 ××× 被合併法人株式 ×××(帳簿価額)
譲渡損益

 

 

 

合併法人の純資産の部

金銭等が交付された場合における適格合併について、合併法人の純資産の考え方をみていきます。

 

資本金等の額

合併法人の適格合併により増加する資本金等の額は、次のイに掲げる金額から次のロ及びハに掲げる金額を減算した金額とされました(法令8 ①五)。

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利益積立金額

合併法人の適格合併により増加する利益積立金額は、次のイに掲げる金額から次のロからホまでに掲げる金額を減算した金額とされました(法令9 ①二)。

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参考仕訳

 

適格合併~金銭等の交付なし~

資産 ××× 負債 ×××
資本金等の額 ×××
利益積立金額 ×××

 

適格合併~金銭等の交付あり~

資産 ××× 負債 ×××
資本金等の額 ×××
利益積立金額 ×××
現金預金   ×××

 

  • この記事を書いた人

jun.hamano

濱野純税理士事務所 代表。 【事務所HP】https://hamanotax.com 1980年10月 埼玉生まれ。埼玉県草加市育ち、東京・蒲田在住。税理士。中小企業診断士。節税、節約、税務処理を身をもって実践しブログに公開しています。

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