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【合併があった場合の簡易課税制度の判定】逆さ合併のときは必ず消費税の簡易課税の適用可否を確認する!

投稿日:2018年8月28日 更新日:

消費税の簡易課税制度については、以前確認をおこないました。

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今回は更に簡易課税制度を深掘りします。

合併があった場合に、消費税の納税義務の判定と簡易課税制度の適用の判定の点において、両者で異なる点があります。

ついうっかり見落としがちなこちらの論点について見ていきたいと思います。

 

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吸収合併があった時の消費税の納税義務の判定

まずは、基礎事項として吸収合併があった場合の納税義務の判定について見ていきます。

 

判定の手順

吸収合併があった場合の消費税の納税義務の判定手順は以下のようになります。

 

①合併法人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えるか?

→超える・・・課税事業者 →超えない・・・②へ

 

基準期間に対応する期間(※)の被合併法人の課税売上高(年換算)が1,000万円を超えるか?

→超える・・・合併後の期間は課税事業者 →超えない・・・免税事業者

 

※基準期間に対応する期間

合併法人の合併があった日の属する事業年度開始の日の2年前の日の前日から同日以後1年を経過する日までの間に終了した被合併法人の各事業年度

 

具体例

〇A社(3月決算)はB社(12月決算)と10月1日にA社を存続法人として吸収合併を行った。

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①「合併法人の基準期間(A1)における課税売上高」で判定する

→1,000万円超・・・課税事業者

→1,000万円以下・・・②へ

 

②「基準期間に対応する期間(B1)における被合併法人の課税売上高」で判定する

→1,000万円超・・・合併があった日から合併事業年度終了の日まで間(X3.10/1からX4.3.31)、納税義務あり

→1,000万円以下・・・納税義務なし(免税事業者)

 

合併があった時の納税義務の判定における特徴

消費税の納税義務の判定においては、合併法人の基準期間における課税売上高のみならず、被合併法人の課税売上高を考慮して判定する点が特徴的です。

 

 

吸収合併があった時の消費税の簡易課税の判定

判定の手順

吸収合併があった場合の簡易課税制度の判定においては、消費税基本通達13-1-2で留意点が述べられています。

 

(合併法人等が簡易課税制度を選択する場合の基準期間の課税売上高の判定)
13-1-2 吸収合併又は吸収分割があった場合において、当該吸収合併に係る合併法人又は当該吸収分割に係る分割承継法人の法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》に規定する基準期間における課税売上高が5,000万円を超えるかどうかは、当該合併法人又は当該分割承継法人の基準期間における課税売上高のみによって判定するのであるから留意する。

 

要約すると、吸収合併があった場合の簡易課税制度の適用の判定については、合併法人のみの基準期間の課税売上高のみで判定するということになります。

上記の具体例でいえば、「合併法人の基準期間(A1)における課税売上高」が5,000万円を超えるかどうかで判定を行うことになります。

 

合併があった時の簡易課税の判定の特徴

消費税の納税義務の判定では、被合併法人の課税売上高を考慮に入れるのに対し、簡易課税の判定においては、合併法人の基準期間における課税売上高のみで判定する点が特徴的です。

 

 

吸収合併があった時の簡易課税制度の届出の効力・適用時期

消費税基本通達13-1-3の3において、合併があった場合における簡易課税制度の適用について留意点が述べられています。

 

(1) 被合併法人が提出した簡易課税制度選択届出書の効力は、吸収合併又は新設合併により当該被合併法人の事業を承継した合併法人には及ばない。したがって、当該合併法人が簡易課税制度の規定の適用を受けようとするときは、新たに簡易課税制度選択届出書を提出しなければならない。

(2) 法人が新設合併によりその事業を承継した場合又は吸収合併により簡易課税制度の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合において、当該法人が合併があった日の属する課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出したときは、当該課税期間は、令第56条第1項第1号《事業を開始した日の属する課税期間》又は第3号《合併があった日の属する課税期間》に規定する課税期間に該当する。
ただし、当該課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、課税事業者に該当する法人が吸収合併により簡易課税制度の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合の当該課税期間は、令第56条第1項第3号に規定する課税期間には該当しない。

 

上記の通達の内容を噛み砕くと次のようなことが書かれています。

 

(1)被合併法人が提出していた「簡易課税制度選択届出書」の効力は、合併により事業を承継したとしても、合併法人には及びません。

そのため、合併法人が簡易課税制度の適用を受けようとするときは、新たに「簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

 

(2)

①合併法人が、簡易課税制度の適用を受けていた被合併法人と合併した場合に、合併があった日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、合併があった日の属する課税期間から簡易課税制度を適用することができます。

②ただし、合併法人がもともと課税事業者であり、合併があった日前に簡易課税制度を選択していなかった場合に、合併のあった日の属する課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、届出の効力は原則どおり翌課税期間から発生することになります。

 

 

逆さ合併があった時の簡易課税制度

逆さ合併の場合には、次のような特徴があり簡易課税制度の適用を受けられる可能性があります。

〇逆さ合併の場合には、もともと規模の小さい会社が存続会社(合併法人)となるケースが多い。

〇簡易課税制度の判定では、合併法人の基準期間における課税売上高のみで判定が行えるため、もともと規模の小さい会社が存続会社の場合には要件を満たす可能性がある。

〇原則課税よりも簡易課税を適用した方が有利となるケースがある。

合併があった場合の納税義務の判定と簡易課税の判定を一緒だと勘違いしていると、見落としてしまう論点ですので要注意しましょう。

 

 

まとめ

〇合併があった場合の納税義務の判定は、被合併法人の課税売上高も考慮する必要があります。

〇合併があった場合の簡易課税の判定は、合併法人の基準期間における課税売上高のみで判定を行います。

〇簡易課税制度を適用していた法人(被合併法人)と合併した場合には、合併があった課税期間中に「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、合併事業年度から簡易課税制度の適用を受けることができます。(ただし、もともと課税事業者で、簡易課税を選択していなかった場合には、原則通り提出した期の翌期間からの適用となります。)

〇逆さ合併の場合で存続法人が規模の小さい会社の場合には、上記のとおり、簡易課税制度の適用を受けられる可能性があるため確認を必ず行うことをおすすめ致します。

 

 

【編集後記】

先日、税理士登録を所属税理士から開業税理士にするべく申請書を税理士会に提出してきました。今後ともよろしくお願いいたします。

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