前回に引き続き報酬給与額についてです。今回は主に業務委託費関係の取扱いについて確認しています。
マネキン販売員への支払い
食品会社等が得意先店頭でマネキン販売を行う場合、マネキン紹介所に支払うマネキン(販売員)の賃金及び紹介手数料の取扱いについて
マネキンが受け取る対価は、所得税法上、給与として扱われます。これは、マネキンの職務内容がデパート等の一般職員と同一であり、労働した日数や時間を基準として対価が決定されているためです。
したがって、X社がマネキン紹介所に支払った給与相当額は、X社の報酬給与額に含める必要があります。この取扱いは、給与がマネキン紹介所を経由して支払われている場合でも同様です。
委託料・請負費
荷物等の運送委託料や建設工事の請負費などの委託・請負契約に基づく支払いの取扱いについて
委託契約や請負契約に基づいて支払う代金は、原則として報酬給与額に含まれません。これは、これらの支払いが労務の提供に対する対価ではなく、委託された事務の遂行や仕事の完成に対する対価であるためです。
ただし、契約の形態が形式的に請負契約とされていても、その実態が雇用関係もしくはこれに準ずる関係、または出向(転籍を含む)である場合には、請負契約としては取り扱われません。
請負代金が注文法人の報酬給与額となる場合について
請負契約に係る代金は、労務の提供に対する対価ではないため、原則として業務を注文した法人の報酬給与額には含まれません。
しかし、例外的に報酬給与額に含まれる場合があります。それは、自己の業務の一部を他の法人に行わせる形態でありながら、実際には次のような状況にある契約です。
- 当該業務の全部または一部を注文法人自らが行っていると認められる契約の場合
- 正規の雇用以外の方法により人材の提供を受け、その人材を自己の業務に従事させるもので、地方税法第72条の15第2項に規定する労働者派遣法等に基づく契約以外の契約の場合
これらは「名目上の請負契約」とみなされ、請負代金の全部または一部が報酬給与額に該当することになります。
このような実態がある場合には、契約の名称がどのようなものであっても「名目上の請負契約」として扱われ、当該契約に基づく代金のうち労務提供の対価となる部分は報酬給与額に該当することになります。
顧問弁護士などの士業への報酬
報酬給与額は、原則として所得税において給与所得または退職所得とされるものが含まれます。一方、所得税において非課税所得、事業所得、一時所得とされるものは含まれません。
士業に支払う顧問料などの報酬は、所得税において一般的に事業所得として取り扱われるため、報酬給与額には含まれないのが原則です。
ただし、例外的なケースとして、雇用関係に基づいて労務の対価として支払われており、所得税において給与所得とされる場合には、報酬給与額に含まれることになります。
労働者派遣
法人が他の法人から従業者の派遣を受けている場合の派遣料の取扱いについて
労働者派遣法に基づく労働者派遣を受けている場合、支払う派遣料の75%が報酬給与額に含まれます。これに対応して、労働者派遣をした法人については、派遣労働者に係る報酬給与額から受け取る派遣料の75%を控除することになります。
ただし、労働者派遣契約または船員派遣契約に基づかない場合は、労働者派遣等に係る制度の適用はありません。この場合には、当該契約に基づく代金のうち労務提供の対価となる部分が報酬給与額として扱われます。
労働者派遣契約において派遣労働者に係る交通費を別途負担する場合の取扱いについて
労働者派遣契約に基づく派遣契約料には、派遣労働者等に係る旅費等が含まれるものとされています。そのため、派遣労働者等への派遣料と旅費等が区分されていても、当該旅費等を含めた金額が対象となります。
ただし、労働者派遣契約とは別に交通費を負担する場合には、交通費を加算せずに計算することになります。
派遣契約料に消費税が含まれている場合の報酬給与額の計算について
報酬給与額、純支払利子または純支払賃借料の計算においては、消費税及び地方消費税を除いた金額を基礎とすることとされています。
したがって、派遣契約料に消費税が含まれている場合には、派遣契約料から消費税相当分を控除して報酬給与額を計算することになります。